一般社団法人 先端技術産業戦略推進機構
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講演内容概要


[第111回研究会] 農業・ライフ部会研究会
    海外の食料事情とわが国の対応

日  時: 平成20年12月3日(水) 午後1時30分〜3時00分
会  場: 如水会館 2階 ペガサス (東京・竹橋)
講  演: 『海外の食料事情とわが国の対応』
末松 広行 氏 農林水産省 大臣官房 食料安全保障課長
座  長: 渡辺 好明 氏 東京穀物商品取引所 理事長、当機構 理事

 最近の食品を巡る一連の事故・事件を通じて、健康で充実した生活を脅かす“食の安心・安全”についての関心は高まる一方である。
 しかし、食の問題についてそう遠くない将来を見越すと、人口増加に伴う食料不足、耕地の砂漠化や世界的な気象変動による世界的な食料需給の不安定化、あるいは昨今のバイオ燃料需要の拡大、穀物市場への投機による価格高騰などのリスク要素も課題とされなければならない。
 日本の食料自給率は主要先進国の中でも極めて低い水準が続いている。中長期の食料安定供給の基盤となる自給率向上には食生活の見直しもさることながら、貿易政策、国産農産物振興、農政改革など多用な対策が進められている。
 こうした取組をさらに推進し国外の様々な要因による食料安定供給の不安を回避するため、農林水産省では、自給率向上に取り組むため食料情報を収集・分析し、かつ向上に向けた政策を企画・立案する、いわば食の安定供給に関する司令塔として「食料安全保障課」をこの4月に設置した。
 そこで農業・ライフ部会研究会では、渡辺 好明新部会長(東京穀物商品取引所 理事長)を座長にお迎えし、農林水産省大臣官房 食料安全保障課長の末松 広行 氏より、わが国の食料需給の展望について、お話し頂いた。

 日本の食料自給率は戦後大きく低下し、カロリーベースで換算すると現在40%と、主要先進国の中で最低水準にある。食生活の変化に伴い、畜産飼料や植物油の原料、また加工品(野菜、果物、魚介類など)の輸入が増大した。唯一米だけが自給可能である。例えば、江戸時代からある「天ぷらそば」を現在の日本で食べた場合、その食材の約8割は輸入品であり、その依存度の高さがうかがえる。
 もちろん、海外から大量に食料を輸入することには大きなリスクがある。第1に大量の輸入食料を消費することにより、世界の水資源や地球環境に悪影響を与える。第2に食生活の乱れにより、栄養バランスの悪化や肥満者の増加といった健康面での様々な問題が発生する。第3に国産農産物の消費減少により、食料の安定供給や農業・農村の多面的機能や価値そのものに悪影響を与える。第4に国内の限られた農地が有効に活用されず、放棄地面積を増加させる。実際に、農地面積はここ40年の間におよそ2割減少している。
 さらに、近年は国際的な食料事情が急速に変化し、輸入に大きく依存できない状況になりつつある。世界の農産物価格は2008年に入り急上昇した。現在、下落傾向にあるものの、世界の主要農産物価格は従来に比べ高い水準で推移すると予測されている。
 この農産物価格上昇の主因は世界の食料需給の増加に求められる。途上国を中心に人口増加が続いていることに加え、特に中国やインドなどの新興国の所得向上に伴って畜産物の需要が増し、合わせて畜産に必要とされる穀物需要が増加している。
さらにバイオ燃料生産の増加による穀物需要の増加も無視できない。供給の面では、収穫面積拡大の頭打ち、単位面積当たりの収量の鈍化に加え、異常気象の頻発や砂漠化の進行、水資源の節約、さらに家畜伝染病の発生といった要因が農産物の生産条件を悪化させ、需要を満たせない不安を生んでいる。こうした中で、将来的な世界の食料需給はひっ迫の傾向を強め、日本の輸入食料の確保がいっそう厳しくなり、途上国では飢饉や飢餓の増加が予測されている。
 したがって、今後は食料自給率向上に向けて戦略的取組を強化し、日本の食料安全保障の確立と途上国の食糧問題の解決に貢献していく必要がある。自給率向上のターゲットは輸入量を抑えるための様々な取組にあり、例えば小麦に関しては裏作小麦や代替となる米粉を振興し、他に国産飼料や大豆の生産量を増やし、水田をはじめとする農地の有効利用を促すことである。さらに、食生活の改善による米の消費拡大や食品の無駄を解消することも重要である。
 その一方で、農林水産物や食品の輸出を拡大化することで輸出入バランスを調整し、また食料の安定化に向けて食料輸入先を多元化し、主要農産物に関しては一定の備蓄を国内に確保する。さらに、不測時に備えた食料安全保障体制の整備が必要である。
 このような食料安定化の戦略と合わせて、自給率向上を達成するために国民運動「FOOD ACTION NIPPON」
を進めていく。